Devilish heart
「何やってるんだかな。」
ヒリヒリと痛み出した手を横から掴まれ、見るとそこに居たのはアクルクスだった。
仕方ないな、という感じの声に自分のドジさを思い知りつつ、今は何も言い返せない。
「冷やしてくる…。」
「いい。俺が治す。」
涙ぐみながら手を引こうとするが、掴んでいた手がそれを許してはくれなかった。
アクルクスは火傷した相手の指を自分の口元へ持っていき、唇でその傷に触れる。
指全体が仄かに赤く光ったかと思うと、痛みはすぐに消えていった。
それが魔法の力によるものだとは分かっていたが、その効果には今だ驚かされるばかりだ。
「あ、ありがとう///」
「今回はまだ良かったけど、俺の居ない所で怪我するなよ。」
火傷が治った手を今だ握られたまま、引き寄せられて潤んだ瞼に口付けを受けた。
ふわりと触れただけのそれは優しく、自分を慰めてくれるようなものに感じる。
一見無愛想な言葉とは裏腹に、これはアクルクスなりの心配の仕方だと思った。
痛みが引いた手は 今は先ほどとは違った熱だけを湛えている。
end