FILE:03 SCENE
Another Gate

Devilish heart

01.Main chapter - Extra2


氷の話 2


「ひゃっ…!冷たいから氷食べた後はダメ。」
「ダメな割には、いい反応なんだけどな。」

今宵も散々火照らされた体を休ませつつ、アオがうつ伏せになってぐったりしていると
横で氷入りの水を飲んでいたアクルクスに耳を舐められ、その感触に思わず鳥肌がたった。
冷たくなっているのは口だけでなく、コップを持っていた手も同じことで。
何も纏わぬアオの背中に置かれた手のせいで、またびくりと体が震えてしまう。

「もう、人の体で遊ばないでよ///」
「まだ寝るなよ。明日休みなんだろ?」
「…ほんとタフなんだから…。私はアクルほど体力ないんだよ?」
「アオは何もしなくていいんだけどなー。」
「そういう問題じゃないんだって、ば…。」

肌に触れさせない代わりに、その指を絡め取るようにして手を握ると
今だ熱が収まっていないのか、アクルクスはアオの言葉を遮りながら、唇を塞いでいた。
それは行為の途中にも行われるような、甘く濃厚な口付けで。
こうして二人分の唾液が交わる音を聞いていると、
つい先ほどの光景を思い出し、それだけで体が熱くなってしまいそうになる。

「はぁ…、私にも、氷…。」
「ん。ほら口開けろ。」

何か冷たいものが欲しくて、アオが氷をねだると
自分も一欠けら口に含みつつ、アクルクスは濡れた唇に氷を咥えさせた。

「アクルクス、どっちが先に溶かせるか、勝負ねv」
「望む所だ。」

多少くぐもった声を出しながらも、なんとかそれを告げるアオに
アクルクスは不敵な笑みを浮かべると、無言で口の中の欠片を転がし始める。
これで、少しでもアクルクスの気が紛れてくれればいいと願いつつ
アオは自分の口の中の氷を舐めながら、早く溶けるのを待った。

「…あ、私の勝ち?」

そして今だ喋れないでいるアクルクスに、
アオは自分の舌を出して氷が無くなったことを示す。
普段から噛むのがくせになっているアクルクスのことだから
舐めるというのは、意外に苦手なのかもしれなかった。

「負けた罰として、今日はもう寝よう?」
「………。」

我ながら、良い提案だと思っていたアオだったが次の瞬間には頭を引寄せられ、
気が付くと再びアクルクスから深い口付けを受けていた。
送り込まれた氷の粒が、二人の舌の間で急速に溶けていく。
冷たい固まりが口内から消え去ると同時に、ようやく解放され
唇の端から漏れた雫が、アオの咽元をつっと伝っていった。
それを拭うアクルクスの瞳は、今や完全に悪魔独特の色気を湛えている。

「俺の熱は、まだ全然冷めない。」
「だってほら、私勝ったし―――んぅ///」
「だから、どっちが先に溶かせるか勝負なんだろ?」

今回は、当然溶かすものを"氷"と指定しなかったアオの負けで。
ずる賢いというか、そんなことを平然と思いついてしまうアクルクスには
勝負事の類は―――挑まない方が幸いなのかもしれなかった。
溶かされる、ということを身を持って教えられつつも
冷めることのない二人の熱い夜は、まだまだ続きそうだ。


end

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