Devilish heart
「もう、アクルクスなんか嫌い!!」
感情に任せて、ついアオはそんなことを口にしてしまう。
アクルクスに初めて会った日と今では、言葉の重みが違う筈なのに。
「――――――…。」
急に押し黙り、真面目な顔になってしまったアクルクス。
その瞳に深紅の色を見つけ、アオの表情がはっとなった。
「あ…。ごめ…―――っ!?」
謝ろうとした時には、もう遅く
激しく揺れる感情のまま、噛み付かれるように唇を塞がれた。
こんな時のアクルクスに捕まってしまうと、血を見る気がする。
悪魔という生き物の心の闇の深さは、アオが誰よりも知っていた。
「…まさか、本気じゃないだろうな。」
「んんっ…!~~ぅ…!!」
口を閉じさせない為だろうか、唇を抑えるアクルクスの親指のせいで、上手く喋れない。
このままではいけないと、アオは首を横に振って、違うという意思表示をした。
普段のアクルクスは優しく、めったなことでは怒らない。
自分は何かいけないものに触れてしまったんだと、思わざるを得なかった。
けれど一度溢れてしまった感情は、そう簡単に元に戻せない。
「例え嫌われても、俺はもう…絶対にアオを離さない。―――逃げるなよ。」
「どこにも、行かないってば…!」
必死に訴えているのに。瞳孔が細くなった血色の瞳は、それを聞き入れようとしなくて。
いつか二人の気持ちがすれ違った時のように、虚空からアオを縛る鎖が取り出された。
アオは気付かなかったようだが。
この状況で僅かでも逃げようと動いてしまったことが
アクルクスの心に…黒い炎を灯してしまったのだ。
「アオ…。―――愛してる。」
それは相手を傷つけずにはいられない、深すぎる想い。
赤く咲く華と茨に全身を絡め取られるような魂の束縛。
end